非財務の報告の発展に合わせた保証基準の開発

Assurance Standards Keeping Pace on Non-Financial Reporting

Tom Seidenstein | IAASB Chair

Apr 06, 2021 | Japanese

国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、先週行われた2021年3月の会議において、「拡張された外部報告(EER)に対する保証業務への国際保証業務基準3000(改訂)の適用に関する規範性のないガイダンス」(Non-Authoritative Guidance on Applying ISAE 3000 (Revised) to Extended External Reporting (EER) Assurance Engagements)(以下「本ガイダンス」という。)を承認した。本ガイダンスの公表は、4月を予定している。本ガイダンスは、非財務の報告に対する保証という発展途上にある分野を支援する上での大きな前進となる。EERは、サステナビリティ報告、ESG(環境・社会・ガバナンス)報告、統合報告、CSR報告、温室効果ガス報告、及び公共部門におけるサービス・パフォーマンス報告等、様々な形式の報告を包含している。 

本ガイダンスは、十分な検証を経た既存の保証基準である国際保証業務基準(ISAE)3000(改訂)「過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務」(以下「ISAE 3000(改訂)」という。)を基礎としつつ、EERに対する保証業務に当該基準を実際に適用する際に業務実施者や利用者が識別した課題に対応するために作成されたものである。

ISAE 3000(改訂)及びISAE 3410「温室効果ガス報告に対する保証業務」(以下「ISAE 3410」という。)と併せ、本ガイダンスは、保証報告書の想定利用者からの信用を高め信頼性を改善するための強固な指針となる。IAASBとしては、両基準及び本ガイダンスは、欧州連合その他の地域で検討中の新しい報告体系に業務実施者が対応するに当たって十分な頑健性を備えているものと考えているが、当該基準等と実務との間に乖離が生じた場合には、直ちにこれを解消すべく取り組む所存である。 

IAASBによるデュープロセスを経て本ガイダンスが承認されたことで、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の支援の下、2017年に開始されたプロジェクトは完結する。 

拡張された外部報告及び非財務情報の報告への需要の高まりへの対応

近年、企業報告において、非財務情報は重要なテーマとなっている。企業報告が進化するなかで、監査人によるサステナビリティ報告やESG報告への保証ニーズがますます増加している。従前、このような報告及び当該報告に対する保証は、企業によって自発的に行われるのが通例であったが、法令に基づきこれを義務化しようという動きに注目が高まり、昨今は更にその勢いが加速している。IAASBは、企業報告の利用者が、資本配分に関する意思決定に資するより広範な情報開示を求めているなか、この課題に取り組み、支援を行っていく所存である。

本ガイダンスは、保証業務の包括基準であるISAE 3000(改訂)をEERに対する保証業務に適用する上で、主要な利害関係者が直面する10の主要課題に対応している。

本ガイダンスが扱うトピックは、適切な適性及び能力の適用、

職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使、

保証業務の前提条件等の包括的な事項から、

より具体的な専門的事項にまで多岐にわたる。

 

具体的な専門的事項の例としては、

主題情報の作成に用いられる

プロセスの検討(内部統制の理解を含む)、

証拠の入手、虚偽表示の重要性及び

保証報告書における有効なコミュニケーションがある。

 

利害関係者からの強い要請を受け、本ガイダンスは、ISAE 3000(改訂)で検討されている限定的保証業務と合理的保証業務との区別に関する理解を促進するためのより詳細な説明及び具体例を盛り込んでいる。

本ガイダンスの適用対象となる報告の名称を、ESGやその他一般に広く知られている報告ではなく、「拡張された外部報告(EER)」とした我々の選択を疑問に思う声もあろうが、これは本ガイダンスの影響範囲をより広範なものにしようという意図の現れである。ISAE 3000(改訂)は、冒頭で取り上げた様々な形式の非財務情報の報告を含む、過去財務情報の監査又はレビュー業務以外のあらゆる保証業務を適用対象としている。

EER情報は、企業のアニュアルレポートやその他の主要な定期報告書若しくは規制当局への提出書類の一項目として、又は企業が発行する個別の報告書やステートメントとして開示される場合がある。同様に、保証業務が必要となった場合、保証の対象となるEER情報は、報告書全体、又は報告書内の一つ若しくは複数の指標、項目や記述である場合がある。ISAE 3000(改訂)及び本ガイダンスは、それら全てに対応している。

EERに対する保証業務において必須となる品質へのコミットメント及び最高水準の倫理規程 

本ガイダンスは、IAASBの規範性のある公表物であるISAE 3000(改訂)の適用を支援するものであり、当該基準の要求事項にはない追加的な要求事項を含んでおらず、また、当該基準の要求事項又は適用指針を無効化又は変更するものではない。保証業務の品質及び倫理に関する要求事項は、既に当該基準に深く組み込まれているということに留意することが重要である。

ISAE 3000(改訂)の要求事項には、以下が含まれる。

  • 業務実施者は、国際品質管理基準第1号、又はこれと同程度以上の要求水準を有するその他の職業的専門家としての基準若しくは法令等の対象となる監査事務所に所属していること。当該事項は、2020年12月に公表されたIAASBの新規及び改訂された品質マネジメント基準に合わせて更新される予定である。
  • 業務実施者及び業務チームのメンバーは、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が公表した職業会計士のための国際倫理規程(国際独立性基準を含む)、又はこれと同程度以上の要求水準を有するその他の職業的専門家としての基準又は法令等の対象であること。
  • 業務実施者は、自身の能力(保証業務の技能及び技法を含む。)及びその他の業務実施者の能力に対処する基準の要求事項を遵守すること。

正しい条件が存在することの確認

業務実施者は、保証業務の前提条件が満たされている場合にのみ、ISAE 3000(改訂)に基づく保証契約の新規の受嘱又は更新を行うことが認められている。当該前提条件は、主題情報の利用者のニーズ及び当該情報の作成に当たって適用された規準(例えば、IASE3000(改訂)の要求事項を満たす報告フレームワークや一連の報告基準)の適切性等を踏まえた、保証業務に合理的な目的があるかどうかの判断等に関係するものである。

本ガイダンスの多くの部分は、保証業務の前提条件が満たされているかどうかの判断に関するISAE 3000(改訂)の要求事項の運用に当たって業務実施者をサポートするための記述に割かれている。

また、首尾一貫したサステナビリティ報告基準の策定に向けた近年の世界的動向も、適切な規準の提供による保証業務の前提条件を整備する取り組みを後押しするものとなろう。 

追加のサポート資料

本ガイダンスに関するパブリック・コンサルテーションの回答者から、特定の要素についての補足資料の公表を促す意見が多く寄せられたことを受け、本ガイダンスには、二つの補足資料が添付されている。特に、EERに対する保証業務に関するより詳細な実例の提供を望む声が多く、二つの規範性のないサポート資料を本ガイダンスと同時に公表することとした(注:これらの資料は本ガイダンスと一体不可分ではない。すなわち、本ガイダンスは当該資料を参照せずとも利用可能であり、当該資料は業務実施者が参照を希望する場合にのみ追加的なリソースとして利用可能なものであることに留意されたい)。このサポート資料には、①「EERに関する信用及び信頼モデル」(Credibility and Trust Model Relating to EER Reporting)及び②「EERに対する保証業務の主要な側面に関する設例」(Illustrative Examples of Selected Aspects of EER Assurance Engagements)があり、後者には、幅広い報告フレームワークを網羅した設例が掲載されている。

今後の課題

ISAE 3000(改訂)及びISAE 3410と併せ、本ガイダンスは、非財務情報の報告に関する品質保証業務に対して安定した成果を生むための確固とした基盤を提供するものである。一方で、急速に発展する当該分野におけるIAASBの活動は、本ガイダンスの公表で完結するものではないことも十分に認識している。

IAASBは、当該分野の発展のためにIAASBの基準、フレームワーク及びガイダンスの拡充に取り組んでいく用意がある。今後も、関連動向を注視しつつ、アウトリーチ活動の一環として利害関係者との対話に取り組み、IAASBの基準及び国際的な監査・保証の基準設定主体としてのIAASBの役割に影響を及ぼす可能性のある政策協議への参加を図っていく所存である。

This “ASSURANCE STANDARDS KEEPING PACE ON NON-FINANCIAL REPORTING” of the International Auditing and Assurance Standards Board (IAASB), published by the International Federation of Accountants in March 2021 in the English language, has been translated into Japanese by The Japanese Institute of Certified Public Accountants in April 2021, and is used with the permission of IFAC. The approved text of all IFAC publications is that published by IFAC in the English language. IFAC assumes no responsibility for the accuracy and completeness of the translation or for actions that may ensue as a result thereof.

English language text of “ASSURANCE STANDARDS KEEPING PACE ON NON-FINANCIAL REPORTING” © 2020 by IFAC. All rights reserved.

Japanese text of “ASSURANCE STANDARDS KEEPING PACE ON NON-FINANCIAL REPORTING” © 2021 by IFAC. All rights reserved.

Original title: Assurance Standards Keeping Pace on Non-Financial Reporting

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2021年3月に国際会計士連盟(IFAC)の国際公会計基準審議会(IAASB)によって、英語で公表された「非財務の報告の発展に合わせた保証基準の開発」は、2021年4月に日本公認会計士協会によって日本語に翻訳され、IFACの許可を得て複製されている。全てのIFACの文書の正文は、IFACにより英語で公表されたものである。IFACは、翻訳の正確性と完全性、又はその結果として生じる可能性のある行動について一切の責任を負わない。

英文“ASSURANCE STANDARDS KEEPING PACE ON NON-FINANCIAL REPORTING” © 2020 国際会計士連盟(IFAC)。無断複写複製を禁ずる。

和文「非財務の報告の発展に合わせた保証基準の開発」© 2021 国際会計士連盟(IFAC)。無断複写複製を禁ずる。

原題:Assurance Standards Keeping Pace on Non-Financial Reporting

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